『ブルー』
[ 悟天とブラが同い年だったら?というパラレルです。
高校生の二人です。]
天気予報は雨って確かに言ったのに、この青空。
このところ、おれはどうもついてない。
傘をさしてもバランスがいいように、
わざわざパン専用みたいになってた筋斗雲を借りてきたのに。
まぁ、荷物が置けていいけどさ。
まったく、なんだよ。この宿題の量。
その時、人影が近付いてきた。 人影? 空の上に?
「ちょっとーー。なんでさっさと帰っちゃうのよ。」
飛んで来たブラが追いついて、筋斗雲にカバンを置いた。
なんだ、なんだ。 C.C.はこっちじゃないだろ。
「学校で話そうとすると、避けちゃって。カンジ悪い。
あの子に見られたくないからなの?」
あの子っていうのは、先週デートの約束が流れた相手だ。
例の、天下一武道会のおかげでね。
「あの子だったら、トランクスと一緒にいるの見たわよ。」
がーん・・・。 やっぱりか。
トランクス目当てで、おれと親しくなろうとする子がたまにいる。
あの子は違うと思ってたのに・・・。
「悟天って、女の子の趣味良くないわよね。」
大きなお世話だ。
「なによ、暗いわね。 悟空さんが行っちゃったこと、まだ気にしてるの?」
無視してるのに、ブラは気にせずしゃべり続ける。
「地球上の話なんだし、こっちから会いに行けばいいのよ。
気で居場所はわかるんでしょう? うちのママも言ってたわ。」
「・・・ブルマさんは、よくわかってるな。」
「そりゃあママだって、サイヤ人の奥さんだもの。」
ブラは、やっと口を開いたおれに笑いかける。
戦闘民族サイヤ人。
悪く言えば生産をせず、侵略や略奪を糧にしていた人種だ。
おれにも・・・
そんなことには無縁に見えるブラにも、その血が半分流れている。
子供の頃はその強さが誇らしかったけど、今は少し不安になるんだ。
おれは、兄さんみたいに力をうまく抑えて
日常と折り合っていけるんだろうか。
家族を悲しませたりせずに。
その時、ブラがとんでもないことを言い出した。
「もう少し大人になって、あんたがもっとカッコよくなったら、
わたしが奥さんになってあげるわよ。」
じょ、冗談じゃない。 おまえみたいなワガママな女・・・ って言おうとしたのに、
青空に溶け込んだ彼女の髪に見惚れてしまった。
なさけない。
「ちょっと疲れちゃった。 わたしも乗せて。」
絶対ムリだと思ったのに、ブラは雲に腰掛けた。
おれが思うに、筋斗雲は生き物だ。
孫家の一員だったら、そんなに純真じゃなくても大目に見てくれてる気がする・・って、
もしかして、さっきの話を誤解して・・・。
「あ、さっきの話ね、選択肢の一つってことよ。
わたしたち、これからいろんな人と出会うものね。」
な、なーんだ。
そうしてるうちに家が近付いてきた。 大体こいつ、何しに来たんだ。
「宿題、手伝ってあげるわよ。 溜めすぎて大変でしょ。
あっ、チチさんだ。 パンちゃんもいるわ。 やっほーー。」
おれたちに気付いたパンは、飛び上がろうとしていたけど、
飛べない祖母を気使ったのか、下で大きく手を振っている。
「今のチチさんは、パンちゃんがいるから元気なのね。
17年前は、悟天、あんたがいたから元気になったのよね。」
「・・・それもブルマさんが言ったのか。」
「ちがうわ。これはわたしの考えよ。」
口が達者で、自信家で、空と同じ色の瞳と髪を持つ幼なじみ。
おれのことを、一番理解してくれているのは
雲の上で隣に座る、この女の子だってこと。
ちゃんとわかってるよ。 多分ずーっと昔から。