わたしはようやく、悟天の本当の恋人になった。

ぎりぎりまで、押し問答をした末に。

 

生まれたままの姿で彼の重みを感じながら受けるキスは、

やっぱり今までのそれとは違っていて、

わたしはまぶたをきつく閉じているのが精一杯だった。

 

悟天の唇が、わたしの首筋に移動していき、右手が・・・。

「あっ・・・  イヤッ。」 「えっ・・・? ゴメン、痛かった?」

違うけど・・・ とかぶりをふって、

わたしは最初の時のように両手で胸を隠した。

「だって・・・ ぺったんこなんだもん・・・。」

 

おれは、思わず噴き出してしまった。

「もうっ、 笑わないで。」

ブラが、ほっぺを赤くして起こる。

大胆なのか、純情なのかよくわからない。

 

「関係ないんだよ、 そんなこと。 わかってないなぁ・・・。」

頑固な彼女の手首を少しだけ強くつかんで、

露わにした真白な胸に唇を押し当てる。

何度も、でも、跡なんか残さないよう、できるだけそっと。

 

喘ぎとはまだ言えないような彼女の声が聞こえてきて、

さっき自由になった両手のしなやかな指が、俺の髪を梳いていた。

 

 

おれの左腕を枕にして、ブラは静かな寝息をたてる。

昨夜は緊張して眠れなかったと言っていた。

腕の中で、彼女は何度も言ってくれた。

「好き、 大好き・・・ ほんとに好き・・・。」

 

指を通すとすぐにすり抜けてしまう絹糸みたいな彼女の髪からは、

いつも花みたいな、果実みたいな甘い香りがする。

「これ、何の香り? シャンプーかな・・・。」

「ん・・・ これはね・・・。」

 

彼女は眠りに落ちてしまい、続く言葉は聞き取れなかった。

おれは、そっと自分の腕を引き抜く。

ブラの寝顔を見つめていると、多分起こしてしまうから。

 

まどろみの中、夢の中で、わたしは悟天に話していたの。

 

今日は久しぶりに、ママが髪を整えてくれた。

小さい頃、結ってくれたのと同じ手順でブラシを当てて、スプレーを吹き付ける。

スプレーの中身は、C.C.に伝わる魔法のお水よ。

 

サラサラしすぎて、まとまりにくい髪を持つママのために

おじいちゃんが調合した特別製。

おばあちゃんが庭に咲かせていたお花のかおりがつけてある。

 

ママは髪を短くしてからも使い続けて、

今ではママが、わたしのために用意してくれてるのよ・・・。

 

 

ブルマはとうに気づいていた。 娘が恋をしていることに。

 

そしてベジータもまた、娘が纏っている気と、甘い香りが

自分と結ばれた頃の妻のそれと、よく似ていることに気づいていた。

 

 

                

『 Flavor Of Love 』