300.『美女と野獣』
[ 馴れ初めのカテゴリに置くか迷ったのですが、〆がこの時期なので…
ひまママ的ベジブル(ブルベジか)の歴史?という感じです。]
「あんたも来たら?」
その一言が、始まりだった。
その言葉に対し、まるで10代の男の子みたいに、プイと
そっぽを向いたベジータ。
何だか
おかしくて、からかいの言葉を付け足した。
すると彼は頬を赤らめ、怒ったような顔で
こう返した。
「下品な女だ。 …
」
下品ねえ。 そんなこと、これまで一度も言われたことがなかった。
両親は
そういうことを言わない人たちだし、ヤムチャだって そうだ。
でも
あいつ、ベジータの言ったことは正しかった。
わたしは確かに、下品な女だ。 何故
そう思ったかというと…
ベジータをC.C.に招き入れてから しばらく経った、ある夜のこと。
わたしは、ひどくリアルな夢を見た。
男に、抱かれている夢だ。
鍛え抜かれた
たくましい体、鬱陶しいほど黒い髪。
だけど相手が、ヤムチャではないことは
はっきりわかった。
小柄だったし、何よりも目つきが違う。
獰猛な獣にも似た、鋭い目だった。
目覚めた時、あれはベジータだと思った。
けれど、大きな違いがあった。 地球での戦いで、彼は尻尾を切り取られている。
そう。 夢の中の男には、長い尻尾が生えていたのだ。
それでも、あれはベジータだった。
C.C.で顔を合わせ、呆れたり、時には口論をしながらも、わたしは密かに
その思いを強くしていた。
そして
ついに、そのことを確かめる日が やってきた。
ようやっと孫くんが帰還し、未来から来たという不思議な少年から
警告を受けた あの日。
あれから数カ月のち、ひょんな
きっかけから、わたしはベジータに抱かれることになったのだ。
ベッドの上で手を伸ばし、彼の
尾てい骨の辺りに触れてみる。
不思議な感触だ。 ざらついて、微かに盛り上がっている…。
指を動かし確かめていたら、強い力で手首を掴まれた。
「やめろ。 さわるな。」
「痛いの? それとも、くすぐったい?」
口元が動いた。 なのに結局、何も答えない。
質問を変えてみる。 「尻尾って、また
生えてくるんでしょ?」
聞いた話によれば、悟飯くんが
そうだったらしい。
「…
だとしても、もう必要ない。」
「どうして?」
「尻尾は、時に弱点にもなる。 それに大猿は、破壊力はあるが小回りがきかない。
おまけに醜い。」
答えながら起き上がり、さっさと身支度を始めるベジータ。
「ちょっと!」
まったく、ムードも何も
あったものではない。
抗議の言葉に耳を貸すことなく、彼は
こう続けた。
「俺は超サイヤ人になる。 尻尾は
もう、邪魔なだけだ。
生えてきたとしても、この手で ちぎり取ってやる。」
また
繰り返す。
「近いうちに
俺は必ず、超サイヤ人になる。」
まるで、自分自身に言い聞かせているみたいに。
彼は焦っているようだ。
無理もない。 孫くんと
あの不思議な男の子の、超化した姿を目の当たりにしたのだ。
もしかすると
わたしを抱いたのも、その どうしようもない苛立ちを紛らわすためだったのだろうか。
それでも確実に、強い快感を与えてくれるベジータ。
激しい快楽に溺れた
わたしが、心も欲しい、わたしの心も欲してほしい、
そう願うようになったのは、トランクスを身籠ってからだった。
トランクスが生後6か月の時、あの少年の予告通り、大きな戦いが始まった。
さまざまな思いを残して戦いが終わり、
その後
長い年月をかけて、ベジータは わたしの夫になった。
わたしたちは
ようやく結ばれた。 心ごと、抱き合うようになったのだ。
トランクスが青年の入口に立った頃、あきらめかけていた二人目の子を授かった。
ブラと名付けた娘が10歳になる
前の年、またしても、地球が危機に陥った。
孫くんの… ううん、もはや彼だけのせいではないだろう。
サイヤ人の持つ圧倒的な力は、さまざまな敵やトラブルを引き寄せてしまうようだ。
そして
ついには、いつだって わたしたちの希望で、
頼みの綱でもあったドラゴンボールまでもが
敵になってしまった。
次々と現れる
敵との戦い。その中で孫くんは また、新たな姿に変身した。
何でも超サイヤ人から、さらに進化した戦士だという。
それを見たベジータは
ひどく気落ちし、何やら考え込んでいる。
仕方がない。 またしても、大きく水を空けられてしまったのだから…。
「大丈夫よ、任せてちょうだい。 待っててね、ベジータ!」
できる。 絶対に、何とかする。
他の誰でもない、彼の妻である
わたしの手で…。
ブツブツと
ひとりごちながら わたしは、C.C.の粋を集めたコンピューターの画面を睨み、
両手でキーを叩き続けた。
他者の、それも妻の力を借りて
超サイヤ人4になること。
ベジータは、大いに抵抗があるようだ。
そんな夫に、わたしは畳み掛ける。
「関係ないわよ。
わたしじゃなく C.C.、ううん、この地球の科学力を利用してやってると思えばいいわ。」
「…。」
「きっかけなんか
どうでもいいでしょ。
めぐってきたチャンスを生かして、しっかりと自分のものにすればいいの。」
うん、我ながら
いいことを言ったわ。
本当に、何事も
そうだと思う。
手にした幸運を使いこなし、継続し、広げていくこと。
それを行うのは、結局
自分自身なのだから。
そんなこんなで、わたしが作り上げたメカから人工のブルーツ波を浴び、
ベジータは無事に超サイヤ人4になった。
「わあっ、大成功ね。 でも
このメカ、もうちょっと小型化したいわよね…。」
今後の課題を口にしながら、さっきまでとは違う姿の夫に向かって駆け寄っていく。
間近で、よく見るためだ。
黄金色のオーラを纏った超サイヤ人とは、ずいぶん違っている。
体の赤い
ふさふさは、毛皮? それとも体毛なの?
そして、後ろ姿には… 「尻尾。」
それを見て、わたしは思い出した。
ドラゴンボールの力によって、わたしや他の皆とともに、地球に飛ばされてしまったベジータ。
C.C.で、彼を引き取ってから しばらくのち、あの夢を見た。
夢の中で、わたしは尻尾のある男に抱かれていた。
押さえ込まれ、執拗な愛撫で開かされ、入り込まれて
打ちつけられた。
身動きのとれない中、唯一
自由だった手を伸ばして、わたしは男の尻尾を握った。
ぴくり、と男が反応した。
さらに、力を込めて握り締める。 それに加え、手首を素早く上下に動かす。
女が男にしてあげる、あの行為を真似たのだ。
手の中のそれは熱くなり、こころなしか、太さと硬さを増している。
ああ、それに
何だか、わたしの中にあるものも一緒に、同じように…。
のしかかっている男が、口を開いた。
[
離すな。]
え?
[
続けろ。 そのままだ。 ]
…
あの夢で、わたしは知らされたのだ。
引きずり込まれて溺れゆく、身も世もない快楽を。
あえぎながら、ほぼ無意識で口にしている。
「抱いて…。」
その鋭い目を見つめ、長い尻尾を握り締めながら。
愛も心も、後からでいい。 わたしは
まず、求められたい。
強く
激しく、野獣のように。
この辺境の惑星で、いつの間にやら
俺の妻の座におさまった女、ブルマ。
この女の
こういう目を見ていると、俺は、サイヤ人の女どもを思い出す。
男たちに遊ばれ、なぐさみにされるふりをしながらも、
実は
しっかりと、力のある男を見定めていた。
少しでも強く、秀でた子供を宿すためだ。
バカな男は
そのことに気づかず、鼻の下を伸ばしていた。
サイヤ人の女と違い、体力のないブルマは、戦闘力はゼロに近い。
だが、他の力は持っている。
知力、財力に加え、あまり認めたくはないが、いわゆる
女の武器…。
それらを、これでもかと俺に見せつけ、ブルマは俺にせまってきた。
今も
そうだ。
すさまじい力を得た俺を恐れもせずに、その体を押し付けてくる。
華奢な肩に
手をかける。
押し返し、払いのけてやるのは容易い。
だが、そうしない。
それをしたところで、また別の手段を使われるのは
わかっているからだ。
「ああ、」
腕の中で
ブルマが、歓喜の声を上げた。
「うれしい…。」
この女に、俺は結局
逆らえない。
こいつは、美しい女の姿をした野獣だ。