『満月(フルムーン)』
[ 過激なものではありませんが、性描写が含まれますので ご注意ください。]
夜、 C.C.。 持ち帰った仕事を片付けた後、寝室に入る。
ライトは既に消されていて、ベジータが眠っているのかどうか わからない。
それを確かめるためにわたしは、横たわる彼の背中に寄り添って 頬を寄せる。
寝息は聞こえない。 なのにベジータは黙ったままで、何も言ってくれない。
だからわたしは腕を伸ばして、手を 彼の下着の中に差し入れる。
手首を、指を動かすうちに、柔らかく頼りなげとも思えたそれは、熱く固いものに変わっていく。
そこでベジータは、やっと、ようやく口を開く。 「何しやがる・・。」
「起こしちゃったから、お詫びよ。」 そして、耳元で付け加える。
「気持ち、いいでしょ?」 ・・・
彼は少しの間 そのままで、それからこちらを向いて覆いかぶさる。
ここ何年か、 ベジータのやり方が変わったようだ。
丁寧な愛撫は 今も十分に高みに引き上げてくれる。 だから、決して不満というわけじゃない。
けれども、以前のように執拗に責めてくることは少なくなった。
若くなくなったわたしを、気遣っているのだろうか。
それとも、彼も年をとったのだろうか。
そんなことを思いながら、背中にまわしていた腕をずらす。 両手で、彼の腰を押さえ込む。
こうすると、一層深く交わっているような、そんな気分になれるから・・・。
その時 ふと、尾てい骨の辺り、 尻尾の痕に指先が触れた。
ずさんな切られ方をしたその部分は ほんの少しだけ盛り上がって、ざらついている。
ベジータの尻尾。 わたしと こうなった頃には、既に無かった。
もう、生えてこないのかしら。 だけど、もしも生えてきたなら、やっぱり満月の夜には ・・・
わたしはちょっと見てみたいけど、子供たちはショックかもね。
まだ小さいブラは 案外喜びそうだけど、トランクスは、とにかくカッコつけたい年頃だから・・。
終わった後、体を離してしまう前に わたしはもう一度そこに触れた。
「・・さわるな。」 「尻尾を握られると、力が抜けちゃうんでしょう?」
「俺は完ぺきに鍛えていた。」 ふーん。
でも、そこまでしなきゃいけないってことは・・。
「ねぇ、握られた時って、そんなに気持ちいいの?」
かなりイヤな顔をして、ベジータは背を向けてしまった。 質問にも答えずに。
わたしの願い、 と言うと大げさだけど、あの夜 思ったことが叶った。
ベジータに、尻尾が生えてきたのだ。 長さにして、わずか2センチ程だろうか。
まだ、わたしだけしか知らない。
絶対言うな、とすごまれたから、子供たちにも言ってない。
「もう少し伸びたら、すぐに引きちぎってやる。」
短すぎて、自分の手では掴めないのだ。
子供たちの時みたいに、お医者様に頼めば簡単なのに。
特に、女の子であるブラには気を遣ったから、見た目には全くわからないはずだ・・・。
ところが何日経っても、尻尾はその2センチ程から 伸びてくる気配を見せない。
「くそっ。 雑な切られ方をしたせいだ。」
「そうなのかしら・・。 年のせいじゃないの?」
わたしの軽口に、ベジータが言い返す。 「フン、 自分と一緒にするな。」
その言葉に 腹を立てたふりをしたわたしは、彼の尻尾を手のひらで包みこんだ。
短すぎて ちゃんと握ることはできないけれど、ぐっと力を込めるのと、緩めることを繰り返す。
「やめろ・・。」
もう片方の手は既に、前の方についているものを掴んでいる。
驚く程に、反応している。 「やっぱり、気持ちいいのね。」
「もう一度だけ言ってやる。 やめろ。」 「ダメよ・・・。」
次の瞬間。
力いっぱい払いのけられ、よろけたわたしは ベッドの上に放り出された。
「なによ。 ほんの冗談じゃない。」
わたしは、シャワーを浴びた後だった。
着ていたバスローブを、あっという間に引き剥がしたベジータは
わたしをうつ伏せにすると、ウエストに通してあった紐ですばやく両手首を固定した。
「ちょっと・・ やめてよ。」 「ダメだ。」
再び自分の方に向き直させて、涼しい顔で言う。
「普段通りのやり方じゃ、仕置きにならんからな。」
枕を掴んで、カバーをはずす。
引き裂いて ただの布になってしまったそれの 両端を手にしている。
口を塞ぐつもりだろうか。 わたしの予想は はずれた。
ついさっきまで枕カバーだった布で、ベジータはわたしの目元を覆ってしまう。
「声が聞こえないと、つまらんからな・・。」 「イヤよ、こんなの・・。 」
せめてもの抗議のつもりで、脚をばたつかせる。
両足首を掴まれて、持ち上げられる。
見えないけれど、ベジータがわたしをじっと見ているのが、よく わかる・・・。
「とても、そうは思えないぞ。」
そして、彼はするどくした舌先を・・・
「あっ、 イヤっ、 ねぇ、 」 お願い ・・・
「おい、大丈夫か。 しっかりしろ。」
ベジータの顔が、目の前にある。 目隠しされていたはずなのに。
「どうして? あ・・ 」 夢、だったの? いったいどこから?
「うなされてたぞ。」
信じられない。 なんてリアルな夢。
心臓が、自分で聞こえてしまうくらいにバクバクいってる。
汗はびっしょりで、おまけに ・・・
「ねぇ・・ 」
声をかけてくれた後、向こうを向いてしまったベジータの下着にもう一度 手を入れた。
前ではなくて、後ろの方に。
尻尾はやっぱり、生えてない。
「やめろ。 何度起こせば気が済むんだ。」
もう二度と、生えてこないんだろうか。
手のひらで、指先で、ゆっくりと刺激してみる。 ベジータの愛撫の仕方を真似ながら。
彼が、わたしの方に向きを変える。 苛立ったような表情の彼にささやく。
「気持ち良くしてあげる。 何度も起こしたお詫びよ。」
今夜は、満月だった。