『Bulma is Mine.』
[ ヤムチャもトランクスも、こういう性格ではありません(笑)。
完全に管理人の趣味です。 ラストは公式カップルです。]
初秋、 日曜の昼下がり。
おれは一人でC.C.を訪れ、玄関のチャイムを鳴らした。
何日か前に電話をした時、元気がなかったような気がした。
どこかに修行に出たらしく、ベジータの気は感じられない。
まぁ、同席するなんてありえないから、いてもいなくても同じなんだけどな。
ドアが開かれ、ブルマが迎えてくれる。
「いらっしゃい。 どうしたの?急に。 ここへは久しぶりよね。」
「別に。 暇だったから、ご機嫌伺いだよ。」
かつては我が家のように過ごしていたC.C. 。
歩き慣れた廊下を経て、リビングに通される。
淡い色の 質のよさそうなニットを着ているブルマの頬は、ほんのり赤い。
「なんだよ、昼間っから飲んでるのか?」
「少しだけね。 ビールよ。 あんたもどう?」
おれはいい、 と断ると、コーヒーを淹れてくれた。
お母さんは留守だったけど、C.C.社製のコーヒーメーカーだから安心だ。
トランクスは?と尋ねると、自分の部屋で宿題をしているみたい、と答えた。
「宿題って、まだ幼稚園だろ。」
「週に2回、塾に行ってるのよ。 そんなのまだいい、って言ったんだけど。」
本人の希望らしい。
「なんだ。 ベジータと どっかへ修行に出たのかと思ったよ。」
その一言で、ブルマの表情が曇る。
「違うわ。 鍛えてやって、って前から頼んでるのに 全然聞いてくれないし、それに・・ 」
一旦 言葉を切り、グラスに注がれていたビールを一気に流し込む。
「来週ね、 運動会があるのよ。」 「へえ。 そりゃあ 楽しみだな。」
「来年からは小学生だから、幼稚園では最後の運動会よ。 なのにベジータってば・・・。」
終わりまで聞かなくてもわかった。 ブルマの不機嫌の理由も。
「これまで 一度も参加したことないのよ。 父親参観日だって いつも、うちの父さんが行ってたの。」
「・・そんなの、はじめからわかってたことだろ。」 「だけど・・・。」
おれは立ち上がり、向かいのソファに座って うつむくブルマの隣に腰をおろした。
「だから おれと一緒になってればよかったんだよ。」
「他に女をつくる人なんか、もっとイヤよ。」
「そんなもの、つくったことなんかないよ。」
「嘘つき・・・。」
つぶやいたブルマの、華奢な肩に腕をまわして 素早く唇をふさぐ。
「何するのよ!」 「キスだよ。」
わざと あっけらかんと答える。
「落ち込んでる時はこうやってなぐさめろ、ってよく言ってたろ。」
そう。 おれたちは、お互いが初めてだった。
おれの 女の扱い方は、全てブルマに教えられたんだ。
ソファの座面に押し倒して、ニットの裾をまくりあげる。
「ちょっと、 ヤムチャ・・・ 」
白い肌。
あいかわらず豊かな胸を包んでいるのは、上質のニットには そぐわないような、ポップな柄の下着だ。
「かわいいな。 昔からこういうの、好きだったよな。」
おれの言葉で、押し返そうとする手の力がゆるんだ。
その隙に、胸に顔を埋める。
「・・大声出すわよ。」 「構わないよ。」
甘くやわらかな匂いのする この場所は、かつて おれ一人だけのものだった。
この先もずっと、そうであると思っていた。 それなのに・・・
あの頃 おれは、戦士として中途半端な自分に苛立っていた。
非の打ちどころのないブルマに、劣等感を抱いていたんだ。
おれはバカだった。 そんなことで、何よりも大切な女を手放すことになってしまった。
「ねえ ヤムチャ、離して。 こんなところ、ベジータに見られたら・・ 」
「仲直りできなくなっちまう、か?」
「違うわよ。 あんた、殺されちゃうわ。」
だろうな。 そしておれは、もう 二度と生き返ることはできない。
「そうなったらさ、たまには おれのこと、思い出してくれよ。」
「もうっ。 何言ってんのよ・・・。」
なつかしい、やわらかなブルマの胸から唇を離す。
結構 強く吸っていたけど、痕はついてない。 これも、ブルマと覚えたやり方だった。
ドアが開く音がして、おれはソファから立ち上がった。
おれと別れた後、 ブルマの胸に何度となく吸いついたであろう もう一人の男が現れた。
「トランクス・・ 宿題、終わったの?」
取り繕うようにブルマが尋ねて、トランクスは黙ってうなずく。
「じゃあ、おやつにしましょうね。 ちょっと待っててね・・・。」
小走りでキッチンへと消えていく後ろ姿を見送りながら、おれはトランクスに向かって声をかけた。
「来週、運動会なんだって?」
返事はない。 射るように鋭い目は、父親にほんとうによく似ている。
「ベジータが・・ おまえの父さんが来てくれないのなら、おれが行ってやろうか?」
「・・パパが帰ったら、もう一度頼んでみる。」
やっと口を開いた。
「そうだな。 それでダメだったら、いつでも電話くれよ。」
さっきと同じように、何も言わずに トランクスはうなずく。
電話など決してかかってこないことを、おれはわかっていた。
夜になる前に、ベジータは帰ってきた。
寝室で二人きりになってから、彼はぼそり、とつぶやいた。
「運動会とやらに、行ってやってもいい。」
「ほんと?」 わたしは耳を疑った。
「でも、どうして急に? もしかして・・ 」 トランクスが頼んだのかしら。
「ふふ・・。 あんたも、自分の子には弱いのね。」
ベジータは、ベッドに横たわった。 いつもどおりに、わたしの隣に。
「ごちそうをたくさん用意しなきゃね。わたしも、何か一品作ろうかしら。」
「余計なことはしなくていい。」 そんなことだけを言って。
C.C.に戻ると、トランクスの奴が駆け寄ってきた。 『パパ・・・。』
いつになく、真剣な表情で。
『ねえ、運動会に来てよ。 おれ、頑張るからさ。 パパには退屈だろうけど。』
『・・こんな生ぬるい星のガキどもと競争したって、仕方ないだろう。』
まだ一緒にトレーニングをしたことはないが、身のこなし方を見ていればわかる。
甘やかされて育っているひ弱なガキなんぞ、まるで相手にならないはずだ。
『確かにそうだね。』
思わず、顔を見る。 声の調子が変わったからだ。
『幼稚園ですることなんて、ほんとにつまんないよ。 だけど 地球でやっていくには、仕方ないんだ。』
それにね、と トランクスは続ける。
『ママのためだよ。』 『なんだと・・・?』
『周りとうまくやっていれば、ママは安心するからね。』
挑戦的な話し方、 口の端に笑みを浮かべた、不敵な表情。
まるで、鏡を見ているような気分にさせられる。
『ママが笑ってくれるなら、おれは何だってするよ。』
そして、最後にはこんなことを言いやがった。
『パパは、そうじゃないの?』
ブルマが腕を伸ばして、ベッドの脇のライトを消した。
いつものように俺は、その体を引き寄せる。
身につけている邪魔な布を引きはがし、胸に顔を埋めながら命じる。
「重力室の調整をしておけ。」
かすかな溜息をつきながらブルマが尋ねた。
「え・・? また、調子悪いの・・・ ? 」
「そろそろ、あいつにもトレーニングを始めさせる。」 「ほんと?!」
俺の一言で、ブルマの声は明らかに変わった。
「よかった・・・。 トランクスね、あんたがそう言ってくれるの、ずっと待ってたのよ。
きっと大喜びだわ。」
そう言いながら両腕で、俺の頭を抱きしめる。
何も言わずに俺は、ブルマの胸の匂いを吸い込んだ。
重力室でトランクスは、今の自分の力を思い知ることになるだろう。
この世界で一番強いのは誰なのかということを、存分に叩きこんでやるつもりだ。
最強の男が、一番いい女を自分のものにする。
この女は、ブルマは俺のものだ。