『Happy, Happy Birthday』
[ ヤムチャ×ブルマの初めて物語です。ブルマはヤムチャに
ちゃんと愛されていたからこそ、
ベジータに愛をあげられたと思っています。]
おれの・・ いわゆる初体験、ってやつ。 それは多分18の時だ。
年齢は曖昧だっていうのに、日にちは はっきり覚えてる。
ブルマの誕生日の、次の日だからだ。
あの頃のブルマは、ずいぶん誕生日にこだわっていた。
かなり いいムードになった時にも、誕生日の夜にそうしたいと言って拒んだ。
正直 不満だったけど、まぁ いいかな と思いなおした。
アルバイトしていたとはいえ、
大金持ちの娘であるブルマには何を贈ってやればいいのか わからない。
だから、ブルマの願いがそうだというなら ちゃんと叶えてやりたかった。
それに・・ 実を言うと おれは、自分の誕生日がいつなのか知らなかった。
育ててくれた人から おおまかには聞いていたけど、正確な日にちまではわからない。
誕生日を特別な、大切なものだと考えているブルマは、
両親からうんと愛されて育った 幸せな女の子だ。
いよいよ その日がやってきた。
C.C. では お母さんが、腕によりをかけてごちそうを作り
博士は この日に向けて内緒で作ったという便利なメカをいくつも披露していた。
そして・・・ 新しい服に身を包んだブルマは、いつも以上に とってもきれいだった。
何かを察したのか、ウーロンの奴は おれたちにやたらと絡んでくる。
それを、やっぱり何かを察したらしいプーアルが 一生懸命諫めてくれた。
そんなこんなで、ブルマの部屋で二人っきりになれたのは 11時近かった。
華奢な両肩に手をおいて、こちらに そっと引き寄せる。
数えきれないほど贈られただろう言葉を、もう一度ささやく。
「誕生日 おめでとう。」
背伸びしたブルマと、唇が重なる。
シャワーを浴びたばかりの髪からは、シャンプーか何かの甘い香りが漂ってきた。
服は さっき来ていたやつじゃなくて、下着と寝巻の中間みたいな物に変わっていた。
すぐに脱がしちまいたかったけど、「かわいいな。」と一応言った。
そうしなけりゃ、怒るだろうから。
抱きかかえて ベッドに下ろす。 例の、下着みたいな服に 注意深く手をかける。
薄いひらひらがたくさんついているから、破ったりしたら大変だ。
本当に下着だけの姿になったブルマは、部屋のライトを消そうとした。
その腕をつかまえて おれは言った。 「ダメだよ。 ちゃんと見せてくれよ。」
服の上から抱きしめたことは何度もあるけど、こんなに近くで じっくり見るのは初めてだった。
いったい何に喩えればいいんだろう。
ものすごく きれいな白とピンクでできた、今まで見たことのなかった花。
そうじゃなければ、とびっきり美味そうな果物・・・。
ブルマは頬を赤らめて、おれの目を見ようとしない。
いつもは自信満々なのに、こういう時は違うみたいだ。
そんなことを考えながら おれは、胸に顔を埋めてみた。
そこは もう、信じられないほど 温かくてやわらかい。
シャンプーとは また別の、甘い香りにむせそうになる。
ブルマは微かな溜息とともに、おれの頭を抱きしめてくれる。
小さな声で、おれの名前を呼びながら。
それは これまで、何度も何度も想像したことだった。
だけどブルマの体から 最後の一枚を取り去ったその後。
さすがに想像通りにはいかなくなった。
話には聞いていたけど、初めて同士ってのは やっぱり大変だった。
こっちはとにかく緊張するし、ブルマの方は怖がってるのか すぐに腰を引いちまうし・・・。
どうにか全てを終えて 時計に目をやると、日付はとっくに変わっていた。
「誕生日じゃなくなっちまったな。」
おれの腕を枕にしながらブルマは答える。
「いいわよ。 あのね、どうして誕生日にこだわったかっていうとね・・ 」
ずーっと、忘れないでいるためよ。
ブルマは そうつぶやくと、間もなく寝息をたてはじめた。
忘れちまうなんてこと、あるのかな。 少なくとも 今は、考えられない。
体温が伝わってくる。 重みさえも愛しかった。
寝相の悪いブルマに、夜中に何度も蹴飛ばされたけど、
毛布をとられて 自分のくしゃみで目が覚めたけど、それでも おれは幸せだった。
朝。 ねぼけまなこのブルマを、ベッドの上で再び抱き寄せる。
愛してる。 大切にするよ。 ブルマと こうなって、おれはほんとに幸せ者だ。
昨夜は伝えそびれてしまった言葉を告げようとした、その時。
目覚まし時計から けたたましい音が鳴り響いた。
まあ いいさ。 あせらなくても、いつでも言える。
おれたちは、これからだって ずーっと一緒なんだから・・・。
その日の空は、ブルマの瞳みたいに澄み切った青だった。
あれから もう、ずいぶん経った。
いろんなことが あったけど、
今でもおれは、ブルマの誕生日にはC.C.を訪れることにしている。
あの頃 好きだと言ってた、花やケーキなんかを持って。
たいして珍しくもないプレゼントだけど、ブルマはうれしそうに受け取ってくれる。
そして大抵 食事や酒を勧めてくれて、楽しい時を過ごす。
その後の帰り道、あるいは自分のアパートで。
日付が変わると、おれの胸の奥は ぎゅっと痛む。
こういう気持ちになることなんて、ブルマには無いんだろうな。
だけど最高の思い出があるから、おれは何とかやっていけるんだ。
たくさんの 幸せな思い出をくれたブルマ。
今でも おれは、あいつを愛してる。