307.『渇望』

[ 出張(とは言わないかな)の合間に、一時帰宅したブルマ。

ベジータとの熱い夜です。 ]

夜、C.C.、夫婦の寝室。

「あー、 疲れた…。」  

必要な物があったし、トランクスのことも心配だった。 

だから 一旦 帰ってきたのだけど…。 明日には また、戻らなくてはならない。 

今月は ずっと そんなふうに、慌ただしい毎日を送っている。 

ある大きなプロジェクトに関わっているためだ。

でも それも、ようやく終わろうとしていた。

 

小さなライトだけを灯した薄闇の中、ベッドの方に目をやる。

ベジータは、眠ったふりをしていた。 壁の方を向き、こちらに背を向ける形で。

別に 今さら、労いなんかは期待していない。 

まして さっきのトランクスのように、わざわざ起きてきて お出迎えなんて、してくれるはずもない。

 

ただいま。

その言葉の代わりに わたしは、ベッドの上の 彼の体に のしかかった。 

バスローブの紐を解き、一糸まとわぬ姿になって。

「…。」  

瞼を開いたようだけど、ベジータときたら何も言ってくれない。 

ここまでは、よくあることだからだ。

いつもならば この後、彼のパジャマのズボンを下ろし、硬く膨らみつつあるものへの愛撫を始める。

半身を起して移動し、顔を埋めて頬張ることもある。

でも 今日は、別のことをしようと思う。

 

うつ伏せたまま彼の、鍛え抜かれた太腿に恥骨を押しつける。

力を込めて、ぐんにゃりと抜いて。 それを、幾度も繰り返す。

そうすれば 手や指を使わなくても、とっても気持ちが良くなるのだ…。

ようやっと、ベジータが口を開いた。 

「何をしてやがるんだ? 人の体の上で。」

「別に、 ちょっとね…。」 

「フン。」 「あっ!」

彼の両手に、お尻を ぎゅっと掴まれた。

「そっちこそ、何よ!」 

「別に、意味は無い。 手持ち無沙汰だからだ。」

「… ああ… 、」 

いつもの、胸への愛撫と、同じような やり方で まさぐられる。

だけど、感度の違いだろうか? やや乱暴だけれど、痛みは感じなかった。

彼の手のひら、指の動きが、単純に心地良いと思えた。

喘ぎながら、口から漏らす。 

「気持ち、いい…。」

 

ところで、先ほどからの『運動』を、わたしは まだ続けていた。

「んっ、 んっ … 」 「つくづく、いやらしい女だな。」

その後で、呆れたように 彼は尋ねる。

「今、いったい 何を考えている?」

「ん…? あんたのことよ、もちろん。」

 

研究所内にも、宿泊できる部屋が用意されていた。 

だけど、夜くらいは気兼ねせず寛ぎたいと思い、近くのホテルに部屋をとった。

寝付けなかった夜、好奇心で TVの有料チャンネルをつけてみた。

観たのは もちろん、と言うべきか… 成人向けの映画だ。

内容は、ごく単純だった。 ヒロインは若い女。 大きなお屋敷にすむ お嬢さんだ。

深夜、警備をかいくぐり、彼女の部屋に男が侵入してくる。

寝起きの悪い彼女は助けを呼ぶこともできず、あっという間に 着ていた物をはぎ取られる。

そして両手首を縛られ 一晩中、男の為すがままにされてしまうのだ。

 

何だか、昔を思い出してしまった。

レイプではなかったけれど、夜遅く、まるで人目を避けるようにして窓から入り込んできたベジータ。

そして、やっぱり一晩中…

映画を観終わった後、わたしは何度も窓を見た。

来てくれればいいのに、と思った。

わたしを抱くために、夜空を飛んで、あの頃みたいに…。

 

「ん、あっ!」 

差し込まれた指が うごめく。 彼の中指が、わたしの最も感じる個所を 苛み始めている。

「どうした? さっきのやつを続けろ。」 

「あっ、あっ、 ダメえ…。」

「何がダメなんだ? 親切に、手伝ってやっているんだぞ。」 

そう言ったベジータの もう一方の手の指が、後ろの方から 侵入してくる。

しかも、二本だ。

水の音。 独特のリズムをつけて、抜き差しされる…

「ああーーーっ!!」

彼の上で、うつ伏せのまま わたしは達した。

気がつくと 夢中で、彼の首筋に吸いついていた。

 

「気持ちよかった、すっごく。」

率直な思いを告げた後、唇を再び、首筋に押し当てる。 

手持ち無沙汰な左手で、彼の体の中心を 軽く握る。

手のひらを、手首を動かせば、先端から液が 滲み出ているのがわかった。

「濡れてるわ。」

わたしの半分、三分の一? だけど、結構な量だ。

それは口にできなかった。 

「… !」

乱暴に 仰向けにされ、両脚を開かされる。 ぐいと、勢いよく入り込んでくる。

間もなく、両の腿を持ち上げられて、高い位置から打ちつけられる。

「ねえ、ねえっ、ベジータ。」 「なんだ。」

「ちょっと、タイム。 あのね、」 「何だって言うんだ。 …?」

腰の下に、枕を敷いた。 

「さ、来て!」 「…。」

「こうすればね、くっついたままでも 深く交われるのよ。」 

「チッ、まったく下品な…。」

 

悪態を吐く彼の、首筋に また、唇を押し当てる。 

なんだか今夜は、こうしたい気分なのだ。

そのままの姿勢でささやく。 

「ああ、気持ちいいわあ…。」

「フン、何度 同じことを言えば気が済むんだ。」 

「なによ、いいでしょ…。」

首筋に、今度は歯を当ててみた。 

汗ばんだ皮膚は わずかに、潮のような味がした。

 

 

朝。 「おい! 起きろ!」 

ベジータに、揺り動かされる。

「あら、おはよ。 めずらしいわね、朝のトレーニングは?」 

「それどころじゃない。 こいつを見ろ!」

「え? あっ…。」  

首筋に くっきりと、赤紫色の痕がついていた。

「あはは、ごめーん。 ちょっと強く吸いすぎちゃったわね。」 

「ごめんで済むか! すぐに何とかしろ!」

「えーっ、何とかって いっても…。」

だいたい、なによ。 

いつもは そっちが、お構いなしに食らいついてきて、ベタベタと痕を残してくれるくせに。

 

「… わたしの、いつもの隠し方でいい?」 

「勿体つけるな。 さっさと教えろ!」

「じゃあ その代わり、わたしのお願い 聞いてくれる?」 

「願い、だと?」

「そうよ。 別に、たいしたことじゃないわ。」 

「…。 早く 言え!」

 

三十分程 経ったのち。 

支度を終えて階下に降りると、トランクスがいた。

どことなく、つまらなそうな顔をしている。 

無理もない。 仕事とはいえ このところ 家を空け通しだもの。

 

「ごめんね、トランクス。 

明々後日で終わりの予定なんだけど、会食なんかは断って、すぐに帰ってくるから。」

「うん。 でも… 」 

「? どうしたの?」

「パパも、どっかに行っちゃったんだよ、さっき。」 

「えーっ?」

「何日か帰らないって。 なんか、旧いタイプの戦闘服を着てたよ。」 

「えーっ…。」

 

もしかして、あのハイネックの?

実は さっき、キスマークを隠すにはスカーフを巻くか、襟の詰まった服を着るしかないと言ったのだ。

ふざけるな、と怒るベジータに、わたしは言ってやった。

『だから、いつも言ってるでしょ! 着る物に困っちゃうから 気をつけてよって!』 

 

「ママ?」  トランクスに、怪訝そうに見つめられる。

「あっ、ごめん ごめん。 でも、大丈夫よ。 ベジータはすぐ帰ってくると思うわ。」

「なんで わかるの?」 

「そうしてって、頼んであげる。 あっ、ううん。 こっちの話!」

そう。 わたしの願い、それは夜、会いに来てほしいということ。

頷いてはくれなかったけど、多分、聞いてくれると思う。

 

「このプロジェクトが終わったら、少し のんびりさせてもらうわ。 

どこか行きたい所があったら、連れて行ってあげる。 考えておいてね!」

トランクスに そう言って、わたしはエアカーに乗り込んだ。

 

「そうだわ。」 

信号待ちの間に、携帯を取り出す。 ホテルの番号を押す。

窓が大きく開くスイートルームに、替えてもらうためだ。