044.『好物』

毎度おなじみ、ベッドの中でのイチャイチャ話です。

今夜も遅くなってしまった。

寝室についているシャワールームを使ったのだから、ベジータは目を覚ましているはずだ。

それなのに、何も言わない。  ぴくりとも動かず、眠ったふりを続けている。 

わたしに、背を向けてしまったままで。

 

暗がりの中、横たわっている彼の向こう、大きなベッドの上の狭い場所へ、わざわざ入り込んでいく。

ベジータと、向き合うために。

それでも、彼は瞼を開けようとしない。

肩に手を置いて、唇を重ねる。 強く、押し当てる。 

意外とやわらかである それを、貪って、鋭くした舌を、割りいれてみる・・・。

なのに依然と、何も言ってくれない彼。  

よーし、そっちが その気なら・・・

 

下の方へと移動して、ズボンと下着を一気に下ろす。 

あえて口には含まずに、唇と舌先だけで、なぞるように愛してあげる。

それでも、何も・・・ やめろ とさえも、言おうとしない。 

しっかりと、反応しているくせに。

だったら このまま、思いっきり頬張って、吸い上げて、激しく舌を動かして・・・

でも、 やーめた。  

ズボンと下着を ちゃんと元に戻して、

ちょっと窮屈だけど 向こう側へは戻らずに、わたしは瞼を閉じた。

耳元に、「おやすみなさい。」 と、ささやいてから。

 

キングサイズの広々としたベッドの上だっていうのに、

壁とベジータとの間にできた隙間で 眠ることにしたのだ。

狭い。 だけど その代わり、とっても温かい。  

わたしは間もなく、心地よい眠りへと落ちていった。

 

布を引き裂くような音で、目が覚めた。

「・・? あっ!」  暗い。 

瞼を、確かに大きく開いたはずだというのに。

 

目隠しをされている。 そう気付いた時には、唇を塞がれていた。 

「ん・・ く・・ 」  入り込んだ舌に、口内を まさぐられる。

やっと、ようやく離れてくれた。 自由になった口で、抗議しようとする。 

なのに・・・  「何するのよ! ああっ ・・・ 」  

両膝を掴まれて、ひどく無防備な格好を強いられてしまう。

ついさっきまで、口の中を掻きまわしていた舌が、今度は・・・ 

「あ、あんっ、 やだあ・・ 」 

「文句あるのか。 同じことをしてやっているだけだろう。」

 

そうね。 文句は無いんだけど・・  「ねえっ、 ベジータ、」 

「なんだ。」 「それ、 イヤなの・・。」 

「なんだと? 嘘をつくな。」 「ほんとよ。 それだけじゃ、イヤ・・ 」 

「チッ・・。 欲の深い女だ。」

彼はそう言うと、 舌先での愛撫はやめることなく、

指・・ 中指? を、奥深いところまで刺し入れていった。

速く、 時には ゆっくりと、それを抜き差しするたびに、水によく似た、いやらしい音が響き渡る。

 

「ベジータ・・ ねえ・・。」  手は幸い、縛られていない。 

彼の肩を、揺り動かそうとして手を伸ばす。

「そっちも、指の方がいい。」 

「・・・。 この女は・・。」

呆れた声。 けれど、言うとおりにしてくれる。

片方の手の ある指が、そこの部分をぐいと押し開き、

また別の指が、まるで 転がすように刺激している。

もう片方の手の指は相変わらず、浅く、深く、上下運動を続けている。

 

「あ、 あ ・・・ ねえ、 ねえっ・・ 」 「なんだ。 さっさと言え。」

うるさそうにしながらも、彼は大抵、聞いてはくれる。 

しおらしく、懇願されることが好きなのだろう。

「いっちゃいそう・・。 指、 挿れて・・。」 「? さっきから、そうしてやってるだろうが。」

聞き入れてくれず、わざと、別のことをしてくれることも多いけれど。 

「あのね・・ もう一本、挿れてみてほしいの・・ 」 

「・・! このっ、下品な女め!」

まさに、今 この時も、そうなりそうだ。 

「あん、 指って言ったのに、」 「うるさい!」

 

指などよりも ずっと太く、硬い物に貫かれ、翻弄されて、わたしは気を失ってしまった。  

ほんの 短い間のことだったけど。

 

瞼を開ける。  目隠しは、いつの間にか はずされていた。

手の方は自由だったのだから、自分ではずすこともできたのだ。 

でも、そうしなかった。 何となく。

「うふ、 ぼーっとしちゃった。 すっごく よかったせいね。」 

そう言って甘えると、例によって ピシャリと言い返されてしまった。

「フン、寝ちまってただけじゃないのか。」 

「やーだ、違うわよ。」

 

わたしは彼の手に・・ 右も左も どちらにも、指先に、手のひらに唇を寄せた。

「何の真似だ?」 

「あのね、眠る前にもしたでしょ? 唇と・・ 」 自分の手を伸ばし、彼の体の、ある個所に触れる。

「わたしの、だーいすきな所にキスしてるってわけ。」 

「・・。 そうか。 そんなに好きなら、こうしてみるか?」 「キャッ、やだ、それはダメッ。」

 

ベッドの上、彼の下で、 身をよじりながら、わたしはまた、手を伸ばした。 

今度は枕元の、ライトを点けるためだ。

「ふふっ。 こういう時の、あんたの顔も好きなのよ。」

 

そうだ。 目隠しされていて気付かなかったけど、部屋の中は真っ暗だったのだ。

この人は・・ サイヤ人は皆そうなのだろうか? 暗闇でも ある程度は見えるらしい。 

わたしもそうだと 思ってるのかしらね。

 

窓の外、 遮光ブラインドの向こうは既に、白々と夜が明け始めていた。 

そんなことはそっちのけで、わたしたちは 再び 抱き合う。  

寝不足になったって、構いやしない。

大好きなもの、愛する男を、思う存分、味わうために。