332.『やかましいっ!』

6万打御礼SSとして書かせていただきました。

超化ベジータ×ブルマのお話を一度書いてみたかったんですが、

名作を読んでしまっていたために自分では なかなか・・。

ようやく自分なりのものが書けてよかったと思っています。]

夜、C.C.、寝室。

「うふっ、 すっ・・ごく、よかった・・。」

事の後。  

ブルマの奴は いつもの調子で、湿り気を帯びた体を ぴったりと寄せてきやがる。

 

「あのね、 あの最中にね、 その・・ ここを、こうしてくれたでしょ? それがね、特に・・。」

下品極まりない感想を口にしながら 俺の手を取り、

再び自分の へその下・・ 茂みの奥深くへと導いてゆく。

「あ、 ん ・・ 」 

「チッ、 まったく。 どうしようもない、貪欲な女だぜ。」

 

湿地という例えがふさわしい その周辺を、少しの間 掻き回してやった。

半開きの口元に 汚れた指を差し出す。 

すると、もはや何の躊躇もせずに、ぱくりと勢いよく くわえこんだ。

「うっ、 まずい。 何これ・・。」 「ふん、 今さら 何だ。」 

「だって 今日のは、あんたとわたしのが混じってるじゃない。 いつもと違って。」

 

俺が呆れて黙っていると この女は さらに あけすけに、勝手な希望を語り始める。

「ね、今度の時ね、 できればフィニッシュの時まで、指で・・ さっきのあれを、続けてほしいの。」

「・・・。」

「うーん、 だけど体勢的に苦しいかしら? 後ろからの方が やりやすいのかしら。」

あまりの下品さに、返す言葉が見当たらない。

 

「いっそ 用途に応じて手が・・ 腕の本数が、増えるとかだったらいいのにね! 自分の意思で。」

「・・・ バカか、おまえは! 自分が満足するためなら、相手が化け物でも構わんというのか!!」

「あは、 確かに、想像すると ちょっとね・・。 でもさ、天津飯くんの技に、そういうのあったわよ。」

こんな話の引き合いに出され、少々気の毒に思いながらも 俺は言った。

「フン、薄気味が悪いだけの 非効率的な技だ。」

「じゃあ、分身の術みたいなのは? やっぱり昔、天下一武道会で見たんだけど・・。」

「残像拳とかいうやつか。 あんなものはスピードで、相手の目を錯覚させるだけだろう。」

「そっか、 そうなのね。 実際に 影武者が現れるわけじゃないのね。 なんだあ。」

 

ブツブツと、ひとりごちているブルマ。 

「超サイヤ人より そっちの方がいいなー、なんて思ってたのに。」

ためいきをつき、やけに残念がっている様子だ。

「おい。」  「ん?」 

「俺の影武者に、いったい何をさせるつもりなんだ?」

「えっ!? いやーね。 そんなこと、言えないわよ。」 

「くっ・・・。」

この女は・・。 

下品などとっくに通り越している。 これからは淫乱、あるいは変態と呼んだ方がいいかもしれない。

「付き合ってられるか! 

そんなことがしたければ、言うことを聞いてくれる男を何人か、金で買って来い。」

 

「ひどいこと 言うわね。」  

つぶやいた後、 ぽつりと付け加える。

「あんたとじゃなきゃ、絶対にイヤ。 だから ああ言ったのよ。」 

「・・・。」

 

枕もとのライトを消して、俺たちは眠りに就いた。

 

 

『なんだ、 この状況は・・。 そいつは いったい、』 

尋ねるまでもない。 その男は俺だ。 いや、俺の偽物だ。

 

『助けて、 ベジータ・・。』  

目の前にいる そいつではなく、この俺に向かって、ブルマは訴える。

この女ときたら、何らかの方法で本当に、俺の影武者を作ってしまったのだ。 

何人かではなく、一人だけのようだが。

 

細胞をコピーしたクローンか? あるいは精巧に作られたアンドロイドなのか? 

制御装置とおぼしき リモコンのようなメカが、無残に破壊されている。 

こいつの仕業であることに疑いはない。

こういう、影武者というのは ひどく危険なものなのだ。 

本物に近づけようとすればするほど 勝手に知恵をつけ始め、どんどん力を増幅させて、

最後には本人に とって代わろうとする。

ブルマの奴が そのことを、予測できなかったとは思えない。

この女のことだ。 

好奇心が打ち勝って突っ走り、いざとなったら この俺に後始末させるつもりだったのだろう。

 

『イヤっ、 痛い、 やめてー!』  

悲鳴。 いつもの、甘えた喘ぎとはあきらかに違っている。

その男、 俺の偽物とブルマは今、ベッドの上にいるのだ。

バカめ。 自業自得だ。 

痛い目にあって、少しは懲りればいい。

俺は部屋を出ようとした。

 

『痛い、 やめて、 お願い・・・。』  

さっきに比べ、声に力が無くなっている。

視線を向けると、脚を、おかしな具合に折り曲げられている。

そうだ。 昔は、そういうものだと思っていた。

セックスというのは自分だけが快感を得るためのもので、相手がどうなろうが知ったことではない。

無理な体勢をとらせて 骨を折ってしまおうが、

力の加減など微塵も考えずに、勢い余って殺してしまおうが・・。

 

『おい。』  

いつの間にか俺は、その男の肩に手をかけていた。

悪びれもせず 男は答えた。

『もう少し待っていろ。 済んだら代わってやる。』

当然ながらというべきなのか、声も俺とそっくり同じだ。

『だが もしかしたら、死んじまっているかもしれんな。 その時は悪く思うな。』

あられもない姿で 男に組み敷かれているブルマが、苦しげに呻いた。

その時。  俺の中で、何かが はじけた。

 

『もし うっかり殺してしまったら、どこか その辺から、代わりの女を連れて来てやろう。』 

・・・

その言葉が終わらぬうちに 力を込めて引き剥がし、部屋の壁に叩きつける。

怒りに燃えた目を向けて 応戦の構えをとる その前に、俺は男を粉砕した。

 

やけに あっけなかったな。 やはり偽物のせいなのか、あるいは・・。

痛めつけられ 気絶しかかっているブルマに目を向ける。 

さっきから気付いていたのだが、髪形が 違うのだ。

この、薬品を使って わざわざ 縮れさせたという、悪趣味な形。

これは、トランクスが生まれる前、 俺が地球に来て、まだ日が浅い頃の・・。

さっきの 偽物の俺も、その頃の考え方や力を模していたということなのか?

じゃあ いったい、今はいつだ?  

『おい、 ブルマ。 目を覚ませ。 どういうことなのか説明しろ・・。』

 

ようやく瞼を開いたブルマは、でかい目を、さらに大きく見開いた。

『あんた、ベジータよね? どうして・・ 』

やけに じっくり目を見つめ、 伸ばした手で やたらと髪に触れようとする。

 

壁にかかっている鏡・・  そんなものがあっただろうか。 

とにかく それを見て、俺も驚いた。

俺は、超化していた。  超サイヤ人になっていたのだ。

 

 

「ベジータ、 ベジータったら。 ちょっと、大丈夫?」

うるさく呼びかける声で 目を覚ますと、ブルマの顔が そこにあった。 

髪形は ここ数年の、短く切った形に戻っていた。

 

あれは、ただの夢だったのか?

「うなされてたわよ。 汗もかいて・・。 待ってて。 お水持ってきてあげる。」

 

冷えたミニグラスに口をつけていると、案の定 質問をしてきた。

「どんな夢見てたの?」 「・・・。」 

「やめろ、離れろー って、何度も言ってたけど。」

「知らん。 もう、忘れた。」 

「嘘。 なあに、もしかすると、わたしが他の男と、悪いこと してたとか?」

「覚えてないと言ってるだろう。 さっさと寝ろ。」 

「だって、ブルマって何度も呼んでたわ。 だから わたし、目が覚めたのよ。」

「黙れ!!」

まだ 水の入っていたグラスを 床に放り投げて、俺は ブルマを押し倒した。

 

「ベジータ・・。」  

驚きの表情。 だが それは、乱暴に扱われたことに対してではなかった。

「超サイヤ人になってるわ・・。」 

目を見つめ、 珍しげな様子で髪に触れようとする。 さっきの、夢に出てきた女と同じように。

 

苛立ちと欲望、 そして、情・・ 

名前のわからぬ感情が湧きあがり、溢れ出しそうになる。

「あっ、 ん・・ 」 

超化を解かず その姿のままで、俺はブルマに挑みかかった。

 

 

しばしののち。  

仰向けに寝そべる俺の上に、重なる形でうつ伏せながら ブルマは言った。 

湿った肌を、強く押し付けるようにしながら。

「もお、 最高・・ すごかった・・。」

 

夢の中身を思い出す。 何だって あんな、妙な夢を見たのだろうか。

俺の超化は断じて、あんなことがきっかけではなかった。

ずば抜けた戦闘力を手にした者が 極限まで追い詰められた時、

激しい怒りが引き金となって覚醒する。

そう聞かされ、 信じてきた。

 

だが 下の世代である、トランクスと悟天には それは当てはまらなかった。

共通していることと言えば 生まれつきの戦闘のセンス、 

そして・・

強さと併せ持っている、穏やかな心だ。

認めたくはないが、俺が それを手にすることができたのは、この女を抱いたためだ。

つまり、 今の俺が あるのは、 この女の ・・・

 

しかし、この女、ブルマときたら。  

相も変わらず下品で、勝手なことを捲し立てている。

「すっごく よかったけど、いつも ああじゃ 体が持たないわ。 

だからね、記念日とか、特別な夜だけ あの姿で、ってことにしたら どうかしら。」

「・・・。」 

「誕生日とか、クリスマスとか。 プレゼントがわりね。 ねえ、聞いてる?」

「・・・ やかましいっ!!」