037.『スクープ!』

ブルマ処女設定で馴れ初めを書いてみようと挑戦したのですが・・・

いつもと あまり変わらないため(笑)飯ビーの結婚エピソードを

入れてみました(あくまでも管理人の考えですので、ご了承ください)。]

休みがとれた日の昼下がり、 都に出てきたチチさんと一緒に お茶を飲んだ。

悟天くんもそうだろうけど、トランクスも、高学年になった今は あまり手がかからなくなった。

その代わり 仕事が以前よりも忙しくなってしまったものだから、

こんなふうに過ごすのは久しぶりだった。

 

他愛のない話が ふと途切れた時、わたしは あることを切り出した。 

「悟飯くんとビーデルちゃんって、あいかわらず仲良しよね。」

 

実は、何日か前に 見てしまったのだ。 街を歩いている、二人の姿を。

何かあったのだろうか。 

珍しく元気がない様子のビーデルちゃんの肩をしっかりと、まるで庇うように抱いていた悟飯くん。

少し前までの初々しさとは また違って、もう、どこから見ても 恋人同士というかんじだった。

そのことは口にしない。 けれども わたしは尋ねてみる。 

「結婚とか考えてるのかしらね? 悟飯くんから、何か聞いてないの?」

 

「二人で 話はしてるみてえだな。」 

意外にもあっさりと答えた後で、チチさんは続ける。 

「まあ、もう少し先のことだ。 ちゃんと大学を出て、仕事に慣れてからでねえと。」

「そうね。 だけど10年も先ってわけじゃないわよね。 わあ〜、楽しみ!」

平和な世の中で、みんなそろって 結婚式に出席できるなんて、とっても喜ばしいことだ。  

それに・・・

「初めての相手、」  おっと。 母親であるチチさんの前だから、言い直す。 

「ステキね、 初恋の相手と結婚なんて。」

 

ふっ、と笑ってチチさんは答えた。 

「おらも初恋の、初めての相手と結婚しただよ。」

「あはっ。 ほんと、そうよね。」  

子供の頃からの想いを実らせたチチさん。 

彼女ほど、心変わりや迷いが似合わない人はいないかもしれない。

 

「案外、18号さも そうなんじゃねえだか?」 

今日、誘ったけれど 18号は来なかった。 マーロンちゃんの入学準備で忙しいらしい。

「そうかもね。 まだ若いっていうのもあったけど、

ちゃんとした恋人がいたようには見えなかったもんね。」

 

その話は、そこで終わりになった。  それは 帰る時間がきてしまったことと・・・ 

チチさんが、わたしには話をふらなかったためだ。

それで わたしは、あの日のことを思いだした。 

ずいぶんと久しぶりに。

 

 

まずい、 言いすぎた。  

わたしは この男を、本気で怒らせてしまったらしい。 

だって もともと悪い目つきが血走って、なおさら、一層・・・

 

『きゃあっ!!』 手が伸びてきた。 

襟元を掴まれる。 『ヤダッ・・、』 

着ていた物は 一瞬のうちに、まるで 薄紙のようにボロボロにされてしまった。

『何するのよ!! ここは、神聖な研究室なのよ!!』 

向き合っている男・・  ベジータの口の端が、意地悪く 歪んだ。 

次の瞬間、わたしは宙に浮いた。 ひどく乱暴に、抱え上げられたのだ。

 

彼は確かに、破壊も殺戮も 何とも思わない男だ。

だけど、こういうことはしない。 わたしは、そう思い込んでいた。

その理由は とにかく、恐ろしくプライドが高いこと、

そして・・・

彼が、王子様であったからだ。

 

隣に仮眠室があることを、彼は何故か知っていた。

ベッドの上に 投げ出される。 

悲鳴をあげるよりも先に うつ伏せにされ、体に残っていた衣服の残骸を使って、両手首を固定される。

『イヤあっ・・!!』  

彼は そのうえ、抗議しようと開いた口に、余った切れ端を詰め込もうとしている。

『イヤよ! こんなの!!』 わたしは必死だった。 

『ねえ、こんなのイヤ!! だって、だって わたし・・・』 

これまで、誰にも話さなかったことを口にする。

『初めてなのよ・・・。』

 

ベジータの眉が、ぴくりと動いた。 けれども すぐに、呆れかえったような返事が返ってくる。 

『どうせなら、もう少し マシな嘘をついたらどうだ。』

興味なさそうな顔をしながらも、彼は しっかりと見ていたらしい。 

この家での、これまでの、ヤムチャとわたしのやりとりを。

『ほんとよ。 嘘じゃないの。最後までは まだ・・・ 』 

『・・・。 だったら、なんだって言うんだ。』

『だから! こんなのはイヤなの・・!』

 

短い沈黙ののち、ベジータは手にしていた布切れを、そこいらに放り投げた。 

両手首を縛っていた枷もはずしてくれる。

どうやら、気がそがれたらしい。 わたしを置いて、立ち去ろうとする。 

助かった。  それなのに わたしは 何故か、彼を引き留めた。

『待ってよ。』

自由になった両手で 頬を包み込む。 

『あんたのことは、イヤじゃないの・・。』

 

 

事の後。 隣に横たわっているベジータに向かって、尋ねてみる。 

『あんた、恋人がいたんじゃない?』

答えない。  だけど、否定もしない。 

別の質問をしてみる。 

『婚約者・・ 許嫁か。 それはいたわよね? だって王子様だもん、後継ぎが必要でしょ?』

『・・・。』  

 

言葉が返って来ない。 けれども それは、肯定のしるしであるような気がしていた。 

『ねえ ねえ、どんな人? 美人?』

『・・知らん。 忘れた。』 『えーっ。 ひどいわね、何それ。』 

『ガキの頃に一度、顔を見ただけだ。』

そうだった。 この人の故郷の星は、もう無い。 

広い宇宙の何処にも、もう存在しないのだった。

その時 わたしの胸の奥によぎった感情。 

それは、いたわしさに近いものだったかもしれない。

 

『後継ぎか。 あんたの子供って、いったい どんな子になるのかしらね。』 

『なに?』

『ほら、たとえば悟飯くんって、孫くんに顔はよく似てるじゃない?

だけど中身は全然違うもんね。 面白いわよね。』

 

孫くんの名前を出したのが気に障ったのだろうか。 

脱ぎ散らかした服をさっさと身につけ、ベジータは部屋を出て行ってしまった。

 

彼の体温が残っているベッドの上で、わたしはため息をついた。

さっき この部屋に来た時、彼に向かって訴えたことは嘘じゃない。

長い付き合いだったから、かろうじて、なんだけれども。

 

最初の頃は、とにかく しょっちゅう邪魔が入った。 

(おもにウーロンによる。 本人?はそういうつもりじゃなかったんだろうけど。)

厳しい修行をするために、家を空けていたことも多い。 

だけど、 何よりも・・・

はっきり言うと 痛くて、どうしても うまくいかなかったのだ。 

他の女と「練習」をしてきたことに腹を立てて、一切 触れさせてやらなかったりもした。 

結局、縁が無かったのかもしれない。

だから、こんなに遅くなってしまった。  世間一般の人達に比べて。

 

『でも、まあ よかったかも。』  

初めての相手が王子様なんて、普通の女の人には考えられないことだもの、ね。

 

当の王子様はといえば わたしの体がお気に召したらしく、関係は一度きりでは終わらなかった。

わたしが彼の子供を産むのは、その 翌年のことだ。

 

 

チチさんと会って話した日から、十日ほどが過ぎた夜。 

夕食の席で トランクスが、白い封筒を差し出した。

「なあに?」 

「先に貰ってきちゃった。 他の人達には、まだ届いてないはずだよ。」

トランクスは今日、孫家に遊びに行っていた。

 

「これって・・。」 「悟飯さんとビーデルさん、結婚するんだって。」  

ほぼ同時に口を開いた。 封筒の中身は、二人の結婚式の招待状だったのだ。

「えーっ、婚約じゃなくて? だって まだ、卒業してないじゃない。」 

「赤ちゃんができたんだって。」

「・・・。」  

なるほど。 街で見かけた時の、やや深刻な様子を思い出す。

 

「それがさあ、 悟天に聞いたんだけど・・。」 

どこまで理解しているのか不明だけれど、口に手を当て おかしそうにトランクスは続ける。

「悟飯さんがビーデルさんを家に連れて来て、一緒に話をしようとしたらね、

悟空さんが先に言っちゃったんだって。」

 

『なんだ? オラが知らねえ、強い気を感じるぞ。 それも、すげえ近くだ。』  

・・・ 

 

「はあ・・。 孫くんらしいわね。」 ひとしきり笑った後で、わたしは言おうとした。 

「みんなで、お祝いしてあげなきゃね。」

その言葉が終わらぬうちに、ベジータが口を挟む。 

「言っておくが 俺は関係無いからな。 行かんぞ。」

「そんな言い方無いでしょ。 ダメよ、そんなの!」  

封筒の、宛名を指さす。

「ほら! あんたの名前も書いてあるわ。 これはね、家族みんなで来てくださいってことなのよ。」

「知ったことか・・。」   

そんな捨てゼリフを残し、ベジータは席を立って 食堂を後にした。

 

「ママ・・。」  心配そうなトランクスに、笑顔で応える。 

「大丈夫よ。 ちゃんと説得してみせるわ。 家族みんなで、お祝いしてあげないとね。」

そう。 わたしたちは、長い時間をかけて家族になった。

トランクスを授かる前は、好きだとも、愛してるとも言い合うことはなかった。 

だから、恋人と呼ぶことはできなかった。

だけど ベジータは ここに留まり、トランクスの父親に、そして わたしの夫になってくれたのだ。

 

初恋ではないけど・・・ 

「初めての人と結婚、か。 ふふっ。」 わたしも、実は そうなのよね。

怪訝な顔をしているトランクスを 笑いながら制して、そんなことを考えていた。

 

ところで、ベジータはそのことを、どう思っているんだろう。

そもそも、覚えているんだろうか。 彼にとっては、どうでもいいことなのだろうか。

それとも、 意外と・・・。

 

「後で、聞いてみようっと。」  寝室で、二人きりになった時に。