280.『白い旗』
[ 毎晩 毎晩、お盛んな二人です。 ブラをさずかる 少し前くらいのつもりです。]
C.C. 、夜、 夫婦の寝室、 ベッドの上。
特殊な素材で作られた手袋に包まれていることの多い彼の両手は、あきれるくらいに滑らかだ。
わたしは 今、その手のひらに、指先に、丹念に愛撫されている。
それは とても いやらしい動きをするものだから、うかうかしていると
すぐに、
あまりにも容易く達してしまう。
「ねえ・・。」
だから 彼の手の甲に、自分の手のひらを
そっと重ねて訴えるのだ。
「もう、 挿れて。」 「・・・。」
仰向けにした わたしの、膝を掴んで
脚を開かせ、いつものように彼は入ってくるだろう。
そう思った。 けれども、今夜は違っていた。
うつ伏せにされる。 やや体重をかけるようにしながら、背中に覆いかぶさってくる。
シーツとの隙間に差し込まれた手で、胸をまさぐられる。 「ああっ
・・・ 」
背後から 唇で、首筋をなぞられる。
それと同時に ゆっくりと、濡れた舌が這いまわる。
以前は まるで、獣が噛みつくみたいに
吸いついてきた。
けれど 今は そこまではしない。
理由は おそらく、物事がわかってきている息子に、勘ぐられることがイヤだからだ。
赤紫色の痕が消えなくて困り果てる、わたしの不満を
聞き入れてくれたわけではない。
そんなことを考えていたら、後ろから両手で腰を掴まれた。
「あっ・・ 」 勢いよく、入り込んでくる。 この体勢は、久しぶりかもしれない。
『後ろから するの、あまり好きじゃないのよ。』
以前に そう言ったことが、関係あるとは思えないけれど。
規則正しく、一定のリズムを持って
彼は動く。
わたしは すぐに、高みへと引き上げられる。
「あ ・・ ん、」 もう少し。 あと もう少しで・・・
けれども そこで、彼は動きを止めてしまう。 「どうして
・・・ あっ!」
抗議しようと振り向くと、片手が伸びてきた。 つながったまま
指先で、敏感な個所を刺激される。
彼は まだ、止まったままだ。 仕方がないから
自分で、快感に合わせて 勝手に動く。
「あ、 あ、 んっ ・・・」
「フン、 いい格好だな。」 ・・・。
こんな具合に、一方的に観察されてしまうことも、この体位が好きになれない理由の一つだ。
「・・! きゃ ・・・ 」 指が離れてから 間もなく、彼は再び 動き始めた。
「は、 あ ・・・あっ、 」 持ち上げられ、押さえこまれている下半身。
それ以外は ぐんにゃりと、ベッドの上にうつ伏せている。もう、喘ぎ声しか出てこない。
「くっ・・ 」
・・ 今のは、わたしの声じゃない。
深い息を 一つ吐いた後、 わたしの中、もっとも
奥深い所で 彼は果てた。
仰向けに横たわる彼に、寄りそって話しかける。
「もう。 後ろからするの、好きじゃないって言ってるのに・・。」
「・・。 とても そうは思えないがな。」
「ほんとよ。 だって・・、 」 後ろからだと、なんとなく
あっけないんだもの。
さすがに それは口にしない。
「あんたの顔も見えないし。」 そう言って
わたしは、彼の下半身に顔を埋めた。
「ちっ、 どのみち 顔なんぞ見てないだろうが。」
・・・
固くはなく、 そう大きくはないように見えたものが、口の中で膨らんでいく。
すぐに 入りきらなくなる。
さっき、 わたしの奥に埋め込まれていた時と、ほとんど同じくらいかもしれない。
もう少し、 あと もう少し。 そしたら・・・
その時。 伸びてきた彼の片手が、わたしの肩を乱暴に掴んだ。
これは、向きを変えろというサインだ。 確かに、そうした方が反応がいい。
だから、何も言わずに従う。
なのに、 「・・・! あっ、 や、
ヤダっ!!」
強い力で、今度は腰を掴まれる。
次の瞬間、 わたしの体の中心は、彼の顔の真上に、さらされることになった。
ざらついた、舌の感触。 水の音が響き渡る。
「イヤあっ・・ 」 「うるさい。 つべこべぬかしてないで、おまえも続けろ。」
・・くやしい。
くやしかったから、負けないように
力いっぱい 頬張る。
手のひらと指先で 根元を撫でさすりながら、休みなく、上下にひたすら舌を動かす。
「 くそっ ・・・」 ひどく くやしそうな声が耳に届いた。
ほぼ同時に、生ぬるく苦い味が 口いっぱいに広がる。
だけど、吐き出したりはしない。 奇妙な達成感とともに、ゆっくりと、呑み下す。
舌先で、一滴残らず すくい取る。
さっきのように、受け止めきれずに
溢れ出てしまうことなど決して ないように。
「もうっ。 あれ、好きじゃないのよ。 前にも言ったはずなのに。」
「いちいち文句が多いな。 ・・するのも
されるのも大好きなはずだろうが。」
「だから いっぺんにだと、集中できないから
イヤなの。 それに・・ 」
わたしは、さっきまで唇 それに舌先で、丁寧に愛していた彼自身を
そっと握った。
さすがに もう、口を使う気にはなれなかったから、指と手のひらで愛撫を続ける。
それから、わずかに十数秒ののち。 「きゃあっ。」
仰向けにされ、やや乱暴に組み敷かれた。 膝を掴まれ、脚を大きく広げられる。
「え・・ でも まだ、十分じゃなかったわよ?」
舌打ちの音。 「余計な お世話だ。」
「いいわ。 そのくらいの方が、時間が
かかって、却って・・。」
「おまえという奴は・・。 心底下品な、いやらしい女だな。」
だって、 今日は、 わたし、 まだ・・・。
ちゃんとは口にしていない。 けれども、彼は理解できたらしい。
「おまけに、どうしようもなく どん欲だ。」
「ああ、 やっぱり わたし、あんたが上になる方が好きだわ。」 「・・・。」
「ね、 ベジータ ・・ 」 「なんだ。」
「キス、しよう・・。」
唇が重なり合う直前、 ちろちろと舌を動かし、なぞっていく。
「うふ、 わたしの味がするわ。」
割った唇から その舌を、彼の口の中の奥深くまで
入り込ませていく。
「苦い・・? これが、あんたの味なのよ・・。」
ベジータの、腰の動きが速さを増した。
「あん、ダメ、 まだ、 もっと ・・・
」
愛する夫の、いわゆる 『持ち』 が、あまりよくない原因。
それが己のサービス精神のせいであることを、ブルマは なかなか気付かないのだった。