007.『昼寝』

午前中のトレーニングを終え、昼食を済ませたベジータは気配を感じて居間に向かった。

ソファには、仕事に出ていたはずの妻が横になっていた。

「こんな時間に、どうしたんだ。」

 

ゆっくりと瞼を開いてブルマが答える。

「一段落したから、早引けしてきちゃった。 ここんとこ、忙しかったから・・・。」

小さなあくびをした。

 

「・・・トランクスは何時に帰るんだ。」  「ん? 3時頃かしら・・・ どうして?」

 

言い終わらぬうちに、ベジータが覆いかぶさってきた。

「なによ、 夜まで待てないの・・・ 」

 

広いとはいえないソファの上で、ブルマが着ているものを器用に脱がしていく。

「おまえの夜更かしに付き合っていたら、トレーニングに差し支えるからな。」

仕事に出るわけではなくても、朝寝坊などは自分に許さない男なのだ。

 

ブルマはベジータの肩のあたりに腕をまわした。

「最近帰りが遅かったから、 寂しかったんでしょう?」

 

彼女のやわらかな唇は、返事をしない彼の首筋を這う。

ほんの少しだけ歯を立てて、 力を込めて吸ってみる。

「わたしも、 寂しかった・・・。」

 

 

「眠い・・・ もうダメ・・・ 」

そうつぶやくとブルマは、あられもない姿のままで寝息をたて始めた。

 

息子の帰宅までもう少し時間があるようだがここは居間のソファの上だ。

声をかけても起きない妻を、仕方なく寝室まで運ぼうとした、 

その時。

玄関のほうに、気配を感じた。

 

ベジータはブルマをソファに下ろして、さっき脱がしたブラウスをかけてやり

居間から出てドアを閉めた。

 

「あ、 パパ、 ただいま。」   「・・・早いんじゃないのか。」

動揺していることに気付かれまいと、努めて冷静を装う。

 

「いつもどおりだよ。 ママ、帰ってるの?  車があったけど。」

「あ、 ああ。 早引けしてきたらしい。  疲れてるようだから、寝かせてやれ。」

息子を居間に入らせないよう、ドアの前に立ちはだかる。

 

「そうだね。 おれ、ちょっと友達の家に行くから。」

そう言いながらもトランクスは、自分をじっと見つめている。

 

「約束してるんだろう。 早く行け・・・。」

「遊んでばかりいちゃダメだって、 今日は言わないんだね。」

 

ムッとする父親にかばんを押しつけて、トランクスはようやく出て行った。

 

「チッ、 じろじろ見やがって・・・。」

かばんを床に放り投げ、ソファの方に目をやると、ブルマが起きていた。

ブラウスをはおり、含み笑いをしている。

「まぁ、 いいじゃない・・・ 両親の仲がいいほうが。」

 

そして、言い返される前に、ベジータに向かって腕を伸ばした。

「さっき、寝室に運んでくれようとしてたでしょ?」

 

 

「やっぱり、こっちの方が広くていいわね・・・ 」

 

息子の視線の原因である、夫の首筋に残る痕に再び唇を寄せながら

ブルマはささやいた。

 

その後。

ようやく眠れた彼女につられてベジータも眠ってしまい、

トランクスは帰宅後しばらく放っておかれた。

 

しかし聡明な息子は身の安全のため、両親の邪魔はしなかった。