096.『悪いくせ』

[ はっきりとした性描写があります。ご注意ください。]

「ごめんね、 まだダメなの・・・。」

夜。  ベッドの中で、ベジータに引き寄せられたわたしは言った。

今のこの人は、あまり無理じいをしない。

大抵は、何も言わずに体を離す。

背を向ける、まではしないのだけど、顔をあちらに向けてしまう。

その夜のわたしは、それが少し物足りなかった。

 

彼の右手をとって、唇を寄せる。

「・・・なんだ。」

それを合図に、わたしはベジータに覆い被さる。

両手で頬を挟んで、唇を重ねる。   「キスだけ・・・。」

 

鍛え抜かれた彼の体の、数少ないやわらかな箇所。

味わうように、むさぼってみる。

こうなってしまうともう、キスだけでは終わらない。

 

パジャマの上衣の裾から入ってきたベジータの手が、ゆっくりと背中を這う。

いつの間にか前にまわった彼の両手に胸を強く掴まれる。

「ダメ・・・  今日は、まだ ダメ・・・ 」

いつもみたいに押さえこまれていないから、わたしは一旦体を離す。

「だから、 わたしがしてあげる・・・ 」

「何をだ。」

ベジータは、わざと表情を変えない。

「いいこと。  ね、 脱いで・・・ 」

 

仰向けの彼にのしかかって、首筋に、 胸元に、 唇を這わせる。

跡がつくことなんて気にせずに、思いのままに吸ってみる。

わたしがいつも、されてることをしてやるの。

固い乳首に軽く歯を立て、舌で転がす。

その間、左手はずっと同じ場所にある。

 

それは次第に、片手だけでは持て余す。

だからわたしは移動して、口に含むことにした。

両手で根元をさすりながら、先端の液をきれいに舐めとる。

ふいにベジータに、両手首を掴まれた。

「何するの・・・ 」   「手を使うな。」

 

少しだけ腹がたったわたしは、勝負に出る。

唇を上下させながら、加圧する。   休みなく、舌を動かす。

ベジータの両手が、掴んでいた手首を放して、わたしの髪を幾度も掻き上げる。

 

溜息が聞こえて間もなく、 口の中にしびれるような苦味が広がった・・・

 

わたしは、彼の顔を見ずにベッドから出た。

洗面所を使ったあと、ユニットバスでシャワーを浴びる。

 

ドアが開く音。  ベジータが入ってきた。

「シャワー、使ったら。 わたしはもう寝るわ。」

彼の目が座っているのに気づいていたから、なんとかすり抜けようとする。

けれども腕を掴まれて、後ろから抱き寄せられてしまう。

「お返しをしてやらないとな。  もらいっぱなしは、よくないからな・・・。」

「そんな・・・ 気にしないで。  明後日、 ううん、 明日でいいわよ。」

 

顔をこちらに向けられて、すすいだばかりの口の中に、乱暴な舌が入り込む。

「遠慮するな・・・。」

手が、 指が 伸びてくる。  今さっき、洗い流したばかりなのに。

 

ああ、 やっぱり。

この人には、勝ったままでは終われない。

そのことを一番よく知っているのは、おそらくわたし自身だというのに

何故だか時折、 こういうことになってしまうのだ。