242.『マニキュア』

わたし、マニキュア好きなのよ。

すぐに剥がれちゃうから塗らない、って言う人もいるけど。

 

時間がかかるから、サロンには なかなか行けないんだけど、

考え事をしながら、爪をきれいに塗っていくことが好きなの。

すぐに乾くマニキュアを作ってみたこともあるんだけど、ちょっとつまらないのよね。

 

そういえば、チチさんがこんな話をしてたっけ。

孫くんたちが、結婚したばかりの頃。

 

「悟空さが、おらの手をじーっと見て、

 ブルマの爪とちがって、色がついてねーんだな。って、言っただよ。」

 

わたし、思わず笑っちゃったわ。

意外と、ちゃんと見てたのね。   あの孫くんがね。

 

だけど、その話をするチチさん、

なんだかとっても幸せそうに見えて、うらやましいな、 って思ったわ。

 

 

ヤムチャと初めてデートした時、大きな公園に行ったの。

花壇にお花がたくさん咲いてた。

 

ヤムチャは、わたしの手を見つめて

「ブルマの爪とおんなじ色だ。 きれいだな。」 って、言ったのよ。

わたしは照れて、ちょっと笑って、自分のほうから手をつないだの。

 

ヤムチャは覚えてないんだろうな。

忘れちゃっても、仕方ないけど

他の人に同じことを言ったとしたら、 寂しいな・・・。

 

お別れした日、 そんなことを思ったわ。

 

 

重力室の修理ばかりさせられてた頃、

「いま、きれいに塗ったところだったのに。」 って文句を言っても、

トランクスが生まれたばかりの頃、

「忙しくって、マニキュアもできない。」 ってグチを言っても、

あいつはお構いなしだったわ。

 

だけど、ちゃんと知ってるのよ。

二人だけでいる時、

眠ったふりをしているわたしの手をとって、じっと見つめてるってこと。

 

お化粧も、お洒落もしていないのに

色がついたままなのが、 不思議なのかしら・・・。

 

そんな時、やっぱりわたしは とっても幸せ、って 思うのよ。