045.『ミクロバンド』

[ 文中に、性描写が含まれますのでご注意ください。]

「ターブルくんって、性格は全然違ったけど、あんたによく似てたわね。」

ソファでくつろいでいるベジータは、聞こえているくせに返事をしない。

「昔会った、孫くんの兄貴って奴は全然似てなかったけど。

 あれって、お母さんが別の人なのかしら?」

知らん、 と興味無さげな夫に構わずわたしは続ける。

「似てたのは、背が高いとこぐらいだったわね。 背っていえば、あんたと・・・ 」

ベジータの不機嫌な顔を見て、その先は控えて話題を変える。

「グレちゃん、トランクスや悟天くんたちを見て、うらやましそうにしてたわ。 

早く子供がほしいんですって・・・。」

 

飲んでいたコーヒーが気管に入ってしまったらしく、ベジータはむせて咳こんだ。  

大丈夫?と声をかける。

「異星人同士なのはわたしたちも一緒だけど、体の大きさがね・・・。

 もう少し時間があれば、なんとかしてあげられたのに。」

 

「フン、 くだらん。」

やっとまともに口を開いたと思ったら、ベジータは部屋を出てしまった。

 

できるわよ。 

体を小さくする機械だったら、ずーっと前に完成させてるんだから。

 

夜、 寝室。

「これよ、これ。 ねぇ、見て 見て・・・」

パジャマ姿のブルマが、左手首に腕時計のようなものをつけている。

視線だけをこちらに向けた夫の前で、

彼女の体はみるみるうちに身長の10分の1、 16センチ強にちぢんでしまった。

「すごいでしょ? ミクロバンドっていうのよ。 前に話したこと、あったでしょ?」

 

確かに以前聞かされた。

自分と出会う前の、少女の頃のブルマの冒険談。

つまらないはずはないのだが、ベジータにとっては何故か面白くなかった。

 

「これを応用すれば、体を少し大きくしてあげることだって・・・」

元に戻って説明するブルマを、ベジータは何も言わずに引き寄せて

あっという間に、着ていたものを剥いでしまう。

「なによ、 いきなり・・・ 」

そして抗議の終わらぬうちに、彼女の手首にはめられたミクロバンドのスイッチを押す。

「何するのよ!!」

 

あられもない姿の人形のようになったブルマを、ベジータは自分の掌にのせる。

指で、巧みに彼女の手の自由を奪う。

「こういうことがしたくて、そんなものをこの部屋に持ち込んだんだろう?」

彼の右手の指先が、ブルマの体をゆっくりとなぞる。

「違うわ・・・。 」

 

異常な状況ではあったが、普段と違って表情や体の一部分だけではない

彼女の全身が変わっていくのがよくわかる。

「あっ・・・ あ・・  やだ・・・っ こんな・・・ 」

「小さくて、何を言ってるのか聞こえないな。」

そう言った後、ベジータは ブルマをつかんだままの左手を自分の口元に持っていく。

唇と舌先による、執拗な愛撫。

 

「もう、イヤ・・・  お願い・・・ 」

体中が上気しているかのようなブルマに向かって彼は言う。

「どうしてほしいのか言ってみろ。」

「さっきは、聞こえないって言ってたくせに・・・ 」

「チッ・・ 」

舌打ちをしながらベジータは、小さいままの彼女をベッドの上に置いて解放した。

「さっさと戻れ。」

 

しかし、ブルマは戻らなかった。

負けん気を起こした彼女は ベジータの服につかまって、ズボンの中に入り込もうとした・・・。

 

一時間あまり後。

元の姿で、自分の上に重なっている妻にベジータは言う。

「まったく、どうしようもない下品な女だ。」

言葉とは裏腹に、左手の指先で彼女の乱れた髪を丁寧に梳く。

 

「フンだ、 自分だって・・・。」

自分の下になっている夫に、短いキスを繰り返しながらブルマは言う。

 

先ほどの彼女の試みは失敗に終わり、すぐにつまみ出されてしまった。

「さっき、ちょっと怖かったわよ。 力加減を間違えたら、わたし簡単に死んじゃうでしょ?」

「今さら何を言ってやがるんだ・・・ 」

 

そうだった。

確かにベジータにとっては、普段のわたしも、人形みたいに小さくなっているわたしも

あんまり変わらないのかもしれない。

すっかり慣れて、忘れてしまっていた。

この人が、どんなに慎重にわたしに触れてくれてるかってこと・・・。

 

わたしは、ベジータにもう一度キスをする。

深く、 深く、  長く・・・。

唇を離すと、左手首が目に入った。  ミクロバンドをしたままだった。

ベジータはフンと鼻を鳴らしながらそれを外し、床に放り投げてしまった。

「あーあ。」

 

少しだけ笑ってから、 わたしたちは再び抱き合った。