052.『大好き』
[はっきりとした性描写があります。ご注意ください。]
ベッドに横たわるベジータの厚い胸板に顔を埋め、唇を寄せて、
さっき自分がかかせた汗を吸ってみる。
その音は 抱き合った時、何度も唇を求め合ったことを思い出させた。
こんなふうに体重をかけて 体を重ねていたら
ふつうなら 重い、 と文句を言われるのだろうけど
屈強なこの男は、そんなことは気にしないはずだ。
だからブルマはもう一度彼の耳元でささやく。 遠慮などなしに。
体勢を入れ替えられ、繰り返される愛撫に
うっとりと目を閉じていると、ベジータが言った。
「・・昔、おまえは俺に、悪いことをするなと言っていたな。」
手の、指の動きを彼は止めない。
「・・・してない、でしょ。 悪いことなんて・・・。 いいこと、しか・・・ あ ・・・っ 」
「ちゃんと答えろ・・・。」
意地の悪い言葉と、優しい愛撫と、指使いの応酬。
胸の奥が締め付けられるって、 こういうこと・・・
そんなふうに、ブルマは思う。
のどがかすかに痛む。 ずっと声をあげていたせいだ。
水が飲みたいと思うけれど、ベッドから出て立ち歩く気になれない。
ベジータの左肩の辺りに頭を乗せて、彼の匂いを吸いこんでみる。
ぼんやりした意識の中で、ふと思う。
わたしはその時、いつも同じ言葉を口にしている。
普段それを口に出したら、彼がやけに照れるのは
そのことを思い出してしまうせいなのかも。
でも、昔、 ずいぶん前。 トランクスをさずかる前。
あの頃は、言えなかった。
言いたくて、言うのが怖くて、 とっても苦しかった。
だってわたしの心と体は別々じゃないから。
「好き。」
その言葉を口にする。 声はやはりかすれている。
眠っていると思ってたベジータの、閉じられていたまぶたが少しだけ動いて
わたしに触れていた指先に力がこもる。
幸せなわたしは、もう一度声に出して言う。
「大好き。」