031.『サイヤの系譜』

[ ブルマの死から3年ほど経ったC.C.が舞台です。 

拍手お礼SSの続きのような内容であるため、迷いましたが

筆者の集大成として()こちらにupしました。]

「ちょっと いい?」  「なんだ。」

久しぶりに休みがとれた日の昼下がり。

おれは出かけることをせず、居間にいた父さんに話しかけた。

本題に入る前に、こんな質問をしてみる。 「あのさ・・・ 」

以前から、聞いてみたいと思ってた。

 

「もし、惑星ベジータが存在していたとしたら、父さんは戻る時 母さんを連れて行った?」

くだらん、 と一蹴される前に もしもの話だよ、 と念を押す。

「あいつが望んでいたら、そうしただろうが・・・。」

「・・母さんは おれを手放さないから、おれも一緒 ってことだ。 どっちにしても後継ぎだったんだね。」

 

地球にいたから、C.C.社のトップ。

宇宙に出ていたら、いずれサイヤ人の王になっていたわけだ。

 

「おまえに務まったとは思えんがな。」

「だって長男だよ。 それに・・・ 」 反撃のつもりでおれは続ける。

「父さんは、母さん以外の女に 子供を産ませたりしないだろ?」

それから、舌打ちしている父さんを尻目につぶやいた。

「どっちにしても、大変な人生だ。 かわいい奥さんでもいなきゃ、やってられないな・・・。」

「悟飯の娘のことか。」   ・・なんで知ってるんだよ。

「ブラといい、おまえといい、寄りにも寄って・・・。」

「おれも、そう思ってたよ。」 

女なんて、いくらでもいるって 思おうとしたよ。

「けど、彼女が他の奴のものになるのは 我慢できないんだ。」

そして・・・  一緒にいると、幸せなんだ。

「父さんも、そうだったんじゃないの?」

 

そんな質問に、父さんはもちろん答えない。 だけど、反論もしない。

つまり、 それは・・・。

 

「男二人で、何を話してるの? 調整、終わったわよ。」

作業着姿のブラが、居間にやってきた。

今はブラが、重力室のメンテナンスをしている。

「重力の段階調節が、より細かくできるようになったわ。 これで幼児でもOKよ。」

ブラは自分の子供たちのトレーニングを、おれの時よりも ずっと早くから始めさせるつもりなんだ。

「おまえ、軍隊でも作る気かよ・・・。」

「子供たち、みんなすっごく強くなるわ。 地球は安泰ね。」

自分の腹をさすりながら、ブラは笑う。

袖や裾はまくり上げているのに、腹の辺りはきつそうだ。

「まったく、何人つくれば気がすむんだよ。」

「若いんだから たくさん産みなさい、ってママの遺言だもの。」

限度があるだろ。 おれのイヤミを無視してブラは言う。

「パンちゃんがお嫁に来てくれるなんて、うれしいな。 また、にぎやかになるわね・・・。」

しっかり聞いてたんじゃないか。

 

「おれとパンは 近くにマンションを探すよ。 こんな保育園みたいな家に同居なんて、イヤだね。」

ふぅーん。 と、ブラは口の端に笑みを浮かべる。

うわっ・・・  その顔、父さんにそっくりだ。

「お兄ちゃん。 奥さんとお母さんは違うのよ。」

「・・・わかってるよ。」

「気をつけないと、また逃げられちゃうから。」

 

子供たちが昼寝から覚めるころだ、 とかなんとか言って、ブラは上の階へ上がっていった。

 

「おれは、子供はしばらく いいや。 持つとしたら、女の子がいいな。」

きれいで、頭が良くって、そばに行くといい匂いがしてくるような、 さ。

「・・一人だけじゃ、奪い合いになりかねんぞ。」

そう、 ブラと悟天の子供たちは 何故か男ばっかりなんだ・・・。

 

子供部屋のドアが勢いよく開く音が ここまで聞こえてきて、怪獣どもが降りてくる。  

おれは思わず肩をすくめた。

「あいつら、C.C.を乗っ取るだけじゃなくて いずれ地球を支配するな。」

「いや、宇宙だ。」   父さんが笑う。

 

これでいいのかな。 こういうのが、母さんの願いだったのかな。

どっかで見たような顔をした、ちっちゃな怪獣ども。

そのうちの一匹を抱き上げながら、おれはそんなことを考えていた。