322.『毒』
[絵師様のイラストを見て書いたお話です。
はっきりとした性描写がありますので、ご注意ください。]
俺は、狂っているのだろうか。
欲望を満たした後だというのに、用済みであるはずの女を払いのけることができない。
今も、体を洗おうと浴室に向かえば、いちいちついて来やがる。
「わたしが、洗ってあげるわよ。」
体だけじゃなく、固い髪にも指を通して洗ってあげる。
濡れた髪で額が隠れて、幼い顔になるのを見るのが好き。
「王子様だったんなら、昔はいつも誰かに洗ってもらってたんじゃない?」
わたしの質問に、彼は短い返事だけを返す。
幼すぎて、あまり記憶がないのだろうか。
シャワーのお湯で体温が上がると、背中の傷が浮き上がる。
少しだけ盛り上がってる、尻尾の跡も。
なんだか労しい気持ちになって、そのひとつひとつに口づけてみた。
急に向きを変えたベジータに、わたしの体は壁に押し付けられる。
力を込めて鋭くした舌先に、口の中をまさぐられる。
それは、さっきまでベッドでしていたことによく似ていて
わたしは立っていられなくなる・・・。
「ね、ベッドに・・・」 「ダメだ。」
やっと離れた唇で、発した言葉は別の声に変えられる。
「あっ・・・ ダメ。 そんなふうにしたら、すぐ・・・」
「指がすべるんだ。 仕方ないだろう・・・」 「お湯のせい?」
きつく閉じていた目を開けて、ベジータの顔を見た。
「違うな。」
意地の悪い笑みを浮かべて、抜いた中指を突き出してくる。
顔をそむけたわたしの向きをかえさせて、 入ってくる。
突き上げられる。
喘ぐことしかできずにいると、
さっきわたしの中を苛んでいた指が視界に入った。
顔のすぐそばにあったそれを、口に含んで、歯を立てる。
わたしは夢中だった。
「あつ・・い・・・」
温度の高い浴室での行為のためか、女は床に崩れ落ちた。
仕方なく、抱きかかえて運んでやる。
ベッドにおろすと、閉じていたまぶたを開いて俺の右手をとり、
赤い舌と唇で、中指に滲んでいた血を舐めとった。
そして、こんなことを言いやがった。
「あんたって、ほんとに好きみたいね・・・ わたしの体。」
彼を見上げてわたしは続けた。
「わたしは・・・ あんたの全部が好きよ。」
女の言った言葉のせいか、その夜、俺は奇妙な夢をみた。
故郷の星で、王子として暮らす俺は、捕えられたブルマと出会う。
俺の望みは叶えられ、ブルマは俺のものになる。
一時のなぐさみだったはずが手放すことができなくなり、子供まで産ませてしまう。
純粋なサイヤの血を穢す存在、と
命を奪おうとする者たちを敵にまわしてまで、俺は守ろうとする。
ブルマと、その子供のことを。
夢の中でも、俺は思った。
俺は狂っている、 と。