320.『拘束』
[やはり、某お祭りに影響されて書いたお話です。]
ベジータの戦闘服。
彼が着ていた、ボロボロになっていたそれを
わたしはこっそり分析し続け、ようやく新しいものができあがった。
防御力もかなりのものだというけれど、驚いてしまうのはその伸縮性だ。
プロテクターとブーツ、手袋にも同じ素材が使われている。
「こんなすごい素材を、惜しみなく戦闘服にしていたなんてね・・。
やっぱり大猿に変身した時のためなの?」
ブルマの問いかけに、ベジータは答えない。
それでも訓練の傍らに、自分自身でテストをして
彼はこの戦闘服にほぼ満足しているようだ。
「普通の服を着てたら、大猿になった時すぐ破れちゃうものね。
戻った時、大変よね・・・」
ブルマは、おかしそうにクスクス笑った。
何かを、誰かのことを思い出しているように。
それは、いつしか少し寂しげな笑顔に変わっていた。
「なつかしいな・・・。 」
言葉の途中で、ブルマはふと振り向いた。
いつの間にかベジータが後ろに立っていた。
片方だけ手袋をはずしている。
「なに・・・ ?」
「おまえは、余計なおしゃべりが過ぎるな。」
あっという間のことだった。
ブルマの両手首は後ろに回され、彼の手袋で手錠のように固定された。
そうきつい縛り方ではないものの、自分でははずすことができない。
「なにするのよ・・・ 」 「おまえの好きなことだ。」
もう片方の手袋も外して、ベジータは彼女の口を封じてしまう。
どうして、わざわざこんなことするの?
こんなことしなくたって、わたしは・・・
抗議の言葉は声にはならず、
仰向けにされたブルマは、彼にされるがままになった。
かすかな嗚咽に気付いたベジータは、 自分の下のブルマの顔を見つめる。
大きな青い瞳に、大粒の涙が浮かんでいる。
小さく舌打ちした後、 彼は彼女の口元を自由にした。
「手・・・ 痛いの・・・。 」
結局そちらも解放してやる。
動かせるようになったブルマの両腕は、
迷うことなくベジータの屈強な背中に巻きついていく。
「わたしは、逃げたりしないわ・・・。」
涙の混じったか細い声は、
甘い吐息と、彼の名を呼ぶせつない声に替わっていった。
この人は、ああいうやり方しか知らないのだろうか。
暴力でしか、人と関われないんだろうか。
床に横たわったまま、ぼんやりしていると
ベジータが、戦闘服の上衣を脱いで投げてよこした。
「ふふ・・・ 小柄だっていっても、やっぱりわたしよりは大きいのね。」
両手で裾を引っ張って、なるべく下を隠してみる。
さすがに、すぐれた伸び具合だ。
もともと自分のせいだというのに、ベジータは頬を赤らめ、顔をそむける。
「ね、 わたしの部屋に連れてって。」
ブルマが、不機嫌な彼に向って両腕を伸ばす。
「なんで俺がそんなことを・・・ 」
「手袋をあんなことに使ったからよ。
聞いてくれなきゃ、もう作らないから。 ・・それと 」
苦々しげに自分を抱きかかえた男の耳元で、息がかかるように囁いてみる。
「今度から床の上はやめて、ベッドでね。」
彼女の、その願いはわずか数分後に叶えられたのだった。